「おしっこが赤い」
「何度もおしっこの姿勢をするけどほとんど出ない」
「トイレを失敗するようになっちゃった」
今回は割とよく見る病気のひとつ『おしっこのトラブル』についてです。
そのなかでももっとも一般的な『膀胱炎』を中心にお話します。
膀胱というのは尿を一時的に溜めておく袋です。
腎臓で作られた尿は尿管を通り膀胱に溜められます。
あるていど尿が溜まると尿意を感じ、膀胱が収縮して尿は尿道を通り外に排出されます(排尿)。
膀胱の内側は移行上皮とよばれる細胞によって壁が作られていて、
尿の溜まり具合に合わせて大きさを変えられるわけです。
その膀胱の内側で炎症を起こし、おしっこのトラブルにつながってしまうのが膀胱炎です。
どんな症状?
膀胱炎の初期症状として見られやすいのは、少量頻回尿や排尿時間が長いことです。
膀胱で炎症を起こすと尿意や残尿感を感じやすくなり、尿を我慢できなくなります。
あまり尿が溜まっていないのにトイレに行きたくなったり、
尿を出し切ってるにもかかわらず「おしっこしたい」になってしまうわけです。
排尿痛を伴うこともあり「トイレ行くと痛い」と思い、
トイレ以外での排尿(トイレの失敗)が見られることがあります。
また、炎症が強く起こることで膀胱の内側では出血が起こり、血尿がみられます。
「何度もいきんでるのにおしっこがほとんど出ない」
「おしっこが赤い」
そのためこのような症状で来院される方が多いです。
ただし、尿道に石(尿道結石)などが詰まってしまい物理的には排尿ができなくなってしまう
『尿道閉塞』の場合にも同じような症状になることがあるため注意が必要です。
尿道閉塞は数日で命にかかわる重大な病気で、緊急的に手術が必要になることもあります。
上記のような症状が見られた場合はなるべく早く受診していただくことをおすすめします。
何が原因?
犬において一番多いとされているのは細菌感染です。
細菌が尿道を通って膀胱内に侵入し、膀胱内で悪さ(感染)をすることで炎症を起こすことがあります。
通常であれば定期的に尿が排出されるので菌は洗い流され、
尿路を守る免疫も働いて膀胱炎を起こすことはありません。
しかし、尿を我慢しがちだったり、しっかり出し切れない状態、体が弱り免疫が低下している状態は
膀胱内で菌が増殖し感染を起こしやすくなります。
検出される菌の種類はほとんどの場合、便に含まれるような一般的な細菌です。
膀胱炎はオスと比べてメスで起こりやすい傾向があります。
これはメスの方がオスに比べて尿道口から膀胱までの長さが短いからと言われています。
猫においてはストレスなどで無菌性の膀胱炎を起こすことがあります。
特発性膀胱炎とも呼ばれ、真の原因がはっきりせず長期化してしまうこともあります。
膀胱炎と同じくらいよく見かけるトラブルで、また膀胱炎とも関連してくるものが『膀胱結石』です。
膀胱の中に石ができてしまう病気で、膀胱炎を併発したり、尿道に詰まってしまうことで排尿困難を起こします。
石ができやすくなる原因としては、尿の濃さ、pH(酸性・アルカリ性の傾き具合)などがあり、
これらには食事内容やおやつ、飲水量、肥満などが影響してきます。
結石は膀胱の内側の粘膜を刺激し傷つけます。
傷ついた膀胱粘膜は抵抗力が落ち細菌感染を起こしやすくなります。
また、膀胱炎があることで尿pHの変化などを起こし、結石を作りやすい環境になってしまいます。
結石は食事療法などで溶かすことができる種類(ストルバイト)もありますが、
残念ながら溶けないタイプの石(シュウ酸カルシウムやシスチンなど)が多く、
治療には手術が必要なことがあります。
このように膀胱炎が結石をできやすくしたり、結石が膀胱炎を助長したりする場合があります。
ときには腫瘍(移行上皮癌など)がみつかることもあります。
特に高齢の子は注意が必要です。
治療は?
尿検査や膀胱内の画像検査を行い、原因を確認して治療にすすみます。
細菌感染が疑われる場合は抗生物質の投与が基本となります。
抗生物質は投与する際は必ず病院からの投薬指示を守って与えてください。
中途半端な投薬は病気が治りにくいだけでなく、耐性菌をつくり出す原因となり治療が困難となります。
結石が関連している場合、あわせて食事療法や手術(膀胱切開や尿道造瘻術など)が必要になります。
結石を手術により除去したとしても、結石ができやすい体質が治るわけではありません。
そのため、食事療法は予防的に継続になるケースがほとんどです。
何に気を付けたらいいの?
「おしっこが正常にスムーズに出せているかどうか」
「おしっこの色に変化はないか」
これらを日常生活のなかで注意してみていただくのが一番大切かと思います。
なるべくおしっこを我慢させないことや、水分をしっかりとらせることも大事です。
食事をふやかして与えていただくのもいい方法でしょう。
また、すべての子にダメというわけではないですが、
「煮干し」や「削り節」などは結石のもととなるミネラルが豊富に含まれる為おすすめしません。
そして何より大切なことは気になる症状があった場合に
「様子を見すぎない」
「早めに病院に連れていく」
が大事かなと思います。
どんな病気にもあてはまりますが、早期発見・早期治療が一番です。
気になることがあれば早めに受診をおすすめします。
以上、今回は「おしっこのトラブル」についてでした。(佐藤)