病院紹介

ワンちゃんで「しこり」や「できもの」ができたといって病院に来られる飼い主さまはとても多いです。

 

実際には良性のイボのようなものから、悪性の腫瘍まで、一口に「しこり」といっても様々なものがあります。

 

今回は、ワンちゃんにできる悪性腫瘍のひとつであるリンパ腫についてお話します。

 

 

そもそも「リンパ腫」ってなに?

リンパ腫とは、血液のがんのひとつで、リンパ球と呼ばれる免疫細胞ががん化して起こる腫瘍です。

 

リンパ腫はワンちゃんの腫瘍全体の724%を占め、比較的発生頻度の多い腫瘍とされています。

 

リンパ腫は発生した部位によって、以下のように分類されます。

 

① 多中心(たちゅうしん)型

② 縦隔(じゅうかく)型

③ 消化器型

④ 皮膚型

⑤ 白血病

⑥ 節外(せつがい)型

 

多中心型や縦隔型ははっきりとしたしこりができますが、消化器型はしこり状にならないこともあります。

 

中でもワンちゃんに最もよく発生するのは多中心型リンパ腫です。

 

今回はこの多中心型リンパ腫についてご紹介します。

 

 

ワンちゃんのリンパ腫の約80%は多中心型リンパ腫

多中心型リンパ腫は、体の表面(体表)にあるリンパ節にできるリンパ腫のことです。

 

体表のリンパ節は正常ではあまり触れませんが、リンパ腫ができ腫れたり大きくなったりすると手で触ることができます。

 

ワンちゃんで図のような場所にうずらの卵より大きいしこりが触れた場合は病院で診てもらいましょう。

 

<ワンちゃんの体表リンパ節>

 

多中心型リンパ腫では、通常、複数の体表リンパ節が腫れてきます。

 

目立った症状を示さず、「しこり」に気づいて来院される飼い主さまが多いですが、

 

中には、

 

・食欲不振

・元気低下

・体重減少

・下痢や嘔吐

・咳や呼吸困難

 

などの症状が見られることもあります。

 

 

診断について

主に細胞診の検査で診断します。

 

腫れているリンパ節に針を刺し、細胞を採取して顕微鏡で観察します。

 

必要に応じて遺伝子検査やレントゲン検査、血液検査などを組み合わせることもあります。

 

 

治療について

化学療法(抗がん剤)が最もオーソドックスな治療法です。

 

他の腫瘍に比べ、抗がん剤がよく効くことが分かっているので、手術での腫瘍の摘出などは行わず抗がん剤治療に入ることがほとんどです。

 

また、複数の抗がん剤を組み合わせて使うことが最も効果的なため、いくつかの抗がん剤を週ごとにローテーションします。

 

ただし、リンパ腫を根治させることは難しいため、抗がん剤治療の目的は、主に寛解(かんかい)という、がんを抑えられている状態にし、それを維持することです。

 

リンパ腫は、一般的に、無治療では数週間で死に至るといわれています。

治療がうまくいけば、数ヶ月〜場合によっては数年生きることも可能です。

 

抗がん剤を使用すると、白血球が少なくなることで感染が起こりやすくなったり、下痢嘔吐などが出たりすることがあります。 


なるべくこれらの副作用が出ない範囲で抗がん剤を使用しますが、

万一出てしまった場合は、抗生剤や下痢止めを使用したり、抗がん剤の量を少なくしたり、投与を延期したりします。

 

また、抗がん剤の治療を飼い主さまが望まれない場合はステロイド剤の投与を行います。

 

 

さいごに

リンパ腫も早期発見・治療が大事な病気です。

日ごろからワンちゃんの体をよく触って気になるしこりがないかセルフチェックしていきましょう。

 

 

高橋

2022年9月24日更新