病院紹介

こんにちは。

日中の暑さも和らぎ、朝晩は過ごしやすい気候になってきましたね。

 

 

今回は「前庭疾患(ぜんていしっかん)」についてお話します。

 

 

中年齢から高齢の子で、

 

急にふらふらして立てない

 

頭が傾いて(斜頸)まっすぐ歩けない

 

吐き気が強く食べられない

 

このような症状が見られた場合、「前庭疾患」の可能性があります。

 

 

〇前庭というのは平衡感覚(体のバランス)を担う部分です。

 

脳幹、小脳、内耳とそれらの伝導路である前庭神経を前庭系といいます。

 

この「前庭系の障害」によって起こる疾患を「前庭疾患」と呼びます。

 

 

 

前庭疾患の子の顔を正面からみると、両目が左右に揺れているのが観察されることが多いです。

 

これを眼振(がんしん)と呼びます。

 

眼振は上下方向だったり、ぐるぐる回転しているように見えることもあります。

 

人がバットをおでこに当ててその場でグルグル回転した後のように

(バラエティー番組でたまにみますよね)

 

目が回ってヨタヨタしている状態になってしまいます。

 

悪心(気持ち悪い状態)を強くともない、吐き気が続いたり食欲不振が見られやすいのも特徴です。

 

 

 

〇前庭疾患は、

 

末梢性前庭疾患・・・内耳の障害(耳の病気)、甲状腺機能低下症(ホルモンの病気)など

 

中枢性前庭疾患・・・脳幹や小脳の障害(頭の病気)、メトロニダゾール中毒(薬剤中毒)など

 

に分類されますが、

 

原因がはっきりしない特発性前庭障害のことも多いとされています。

 

 

残念ながら特効薬は無いため、出ている症状に対して治療を行っていきます。

 

耳の病気があれば、耳の洗浄処置や抗生剤などの投与が大事になります。

 

吐き気が強く食事がとれない場合は、点滴や吐き気止めの注射が必要でしょう。

 

重症度にもよりますが、1~2週間以内に何かしら良い変化が見られる子が多いように感じます。

 

 

しかし中には徐々に悪化するケースや重い障害が残ってしまう子もいます。

 

また、脳疾患の究明にはMRIなどの検査が必要になるケースもありますが、

全身麻酔を必要とする検査のため、高齢の子には時にハイリスクな選択となるでしょう。

 

症状の程度と状態を把握したうえで、ご家族と相談しながら治療方針を一緒に考えましょう。

 

 

治療にはご自宅でのケアも大事になります。

 

食事がとりにくい場合は、やわらかく食べやすい形状のフードを選び、

 

食器を口元にもっていったり手で与えたりしてみましょう。

 

また、何気ない段差でつまづいて怪我をしたり、

狭い隙間に入り込んでしまってパニックになったりすることもあります。

 

極力段差をなくし仕切り扉を設けるなど、生活環境を整えて怪我を防止しましょう。

 

そして、不安そうであれば優しく声をかけてあやしてあげてください。

 

ただし、抱っこ中に暴れて落下させてしまう危険性があるため、

不必要に抱っこするのはやめましょう。

 

ご家庭の状況や、その子の状態によって対処の仕方には様々な工夫が必要です。

 

スマートフォンなどで動画を撮って視せていただくとアドバイスがしやすいですね。

 

 

その他、気になることがあればどうぞ遠慮なくご相談ください。

 

 

 

以上、今回は「前庭疾患」についてのお話でした。

(佐藤)

2022年9月2日更新