ワンちゃんやネコちゃんに接種するワクチン。人間のワクチンと同じように、ワクチンは特定の感染症を予防するために接種するものです。何の感染症を予防できるかはワクチンの種類によって変わってきます。今回はワンちゃん・ネコちゃんのワクチンについてご説明します。接種の前に、ワクチンについての知識を深めましょう。
<目次>
・ワクチンの種類
あ-狂犬病ワクチン
あ-混合ワクチン
・ワクチンの接種時期について
・ワクチン接種後の注意点について
・ワクチンの抗体価検査について
●狂犬病ワクチン
狂犬病を予防するためにワンちゃんに接種するワクチンです。
狂犬病は、発症すると100%死亡する怖い病気です。
発症した犬に嚙まれることで人間にも感染し、有効な治療法はなく、
WHOによると全世界で毎年約55,000人が狂犬病で亡くなっています。
日本では年度につき1回、ワンちゃんへの接種が法律で義務付けられています。
近年は、狂犬病ワクチンの接種率の低さが問題視されており、平成29年度の予防注射実施率は71.4%とされています。
しかしこれは登録されているワンちゃんにおける接種率であるため、未登録のワンちゃんも含めると全体の接種率は50.7%程度ではないかと言われています。
WHOでは、「感染症の流行を防ぐためには全体の70%が免疫を持っていることが必要」としているので、それと比べると国内での流行を防げる数値には達していないことが分かります。
●混合ワクチン
ワンちゃん・ネコちゃんにおける特定の感染症を予防するためのワクチンです。
1回のお注射で複数の感染症を予防することができます。
狂犬病ワクチンとは異なり、法律で接種が義務付けられているわけではありませんが(任意接種)、
かかると命に関わる病気も含まれていますので、しっかり予防することが重要です。
★当院で扱っているワンちゃんの混合ワクチンと予防可能な疾患
あ当院では5種と8種の混合ワクチンを取り扱っています。
あワンちゃんのライフスタイルに応じてどちらを打つか決めていきます。
あ
★当院で扱っているネコちゃんの混合ワクチンと予防可能な疾患
あ当院では3種の混合ワクチンを取り扱っています。
あ
<混合ワクチンの豆知識>
混合ワクチンの接種については、世界小動物獣医師会(WSAVA)がガイドラインを発表しています。
その中でワクチンはコアワクチン・ノンコアワクチンに大きく分けられています。
コアワクチンは主に致死率の高い疾患が分類されており、生活環境に関わらず、すべての犬・猫が接種するべきワクチンと定義され、
ノンコアワクチンは生活環境やライフスタイルに応じて、その感染症にかかるリスクがある犬・猫にのみ接種するべきワクチンと定義されています。
★犬における分類
※1 犬伝染性肝炎・犬伝染性喉頭気管炎それぞれに有効
※2 そのワクチンの使用と感染症予防の効果に関して科学的根拠となるデータが不足しているワクチン
★猫における分類
●それぞれのワクチンの接種時期について
・狂犬病ワクチン
法律に基づき年度につき1回接種します。
当院では国の方針に従い、4~6月の間での接種をおすすめしています。
生後90日以内の子犬のときは、生後90日を経過した日から30日以内に接種することが法律で定められています。
・混合ワクチン
1年に1回の接種をおすすめしています。
子犬・子猫のときは生後6~8週ごろに1回目の混合ワクチンを接種し、
生後16週齢を過ぎるころまで、2~4回のワクチン接種をします。
●ワクチン接種後の注意点について
ワクチンの接種後、まれに体調を崩す子がいますので、接種後2日間はトリミング・シャンプーや激しい運動を避け、安静にしていただくようにお願いしています。
元気食欲がない、嘔吐や下痢など、気になる症状があればご連絡ください。
<ワクチンアレルギーについて>
ワクチンアレルギーとは、ワクチン接種後に見られるアレルギー症状のことです。
最も注意しなければならないのは「アナフィラキシー」と呼ばれるもので、
全身性のショック(急にぐったりする)・呼吸困難や興奮、激しい下痢・嘔吐などが見られます。
全身性のショックなど重篤な副作用の発生は接種後30分以内が多く、このような症状が出た場合はすぐに救命処置をする必要があります。
その他のアレルギー症状として、接種後数時間で顔が腫れる(ムーンフェイス)やじんましん等のアレルギー症状が見られることがあります。
そのような症状が出た場合は、お薬を使ってアレルギー症状を抑えてあげます。
●ワクチン抗体価検査について
混合ワクチンに含まれる感染症に対して、体内に十分な抗体があるかを測定し、ワクチン接種が必要かどうか判断するための検査です。
混合ワクチンに含まれるすべての感染症に対しての抗体価を測定するわけではなく、特に重要なコアワクチンに該当する感染症についての抗体価を調べる検査になっています。
病気の治療中もしくは過去にワクチンによる副反応が出たことがあるなどの理由によりできれば混合ワクチン接種を見送りたい場合などに行います。抗体価を調べる場合は、混合ワクチンの接種間隔と同様に、1年に1回の測定を推奨しています。
抗体価が陽性だった場合は混合ワクチンの接種を見送り1年後に再検査とし、陰性だった場合はその子の体調を考慮し混合ワクチンを打つかどうか決めていきます。
(前回のワクチンから3年がたつ場合は健康上の問題がない限り抗体価検査ではなくワクチンの接種をおすすめしています。)
★当院における混合ワクチン・抗体価検査の費用★
ワクチンは、大事な家族であるワンちゃんやネコちゃんを病気から守ってくれるものです。適切な時期にしっかり接種する、または抗体価の検査をすることが大切です。何か分からないことがあれば、お気軽に当院までご相談ください。